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DIARY

FOUJITA

La chapelle Notre Dame-de-la-Paix designed by Leonard Foujita in Reims

La chapelle Notre Dame-de-la-Paix designed by Leonard Foujita in Reims

本日より、映画「FOUJITA」が公開となりました。
天候が優れなかったにもかかわらず、初日にお越し下さった皆様に深くお礼申し上げます。

物語で説明するのではなく、まるでレンブラントの版画のように光と影を巧みに操った圧倒的な映像で静かに語りかける作品です。
藤田嗣治の絵画がお好きな方はもとより、映画を愛する皆様に是非ご覧いただけましたら嬉しいです。

もちろん、これまで映画館とは縁遠かった方々にも、劇場の暗がりでしか感じられない何かをお持ち帰りいただけると信じています。

兵馬俑

Exhibition of The Great Terracotta Army of China's First Emperor

The exhibition of The Great Terracotta Army of China’s First Emperor

撮影の合間に、好奇心を刺激する大人の遊び場を求めて上野を訪れました。
それは、私が生まれる2年ほど前にとある農夫によって発見されたそうです。

中国大陸を初めて統一したという秦の始皇帝は、13歳の折に即位して間もなく自らの陵墓の建立とそこに副葬する品々の製作を命じたとのことです。7つの大国が戰を交え、絶えず牽制し合っていた世において、人質として他国に囚われた母より生まれ、また、未遂に終わったものの、二度までも暗殺されそうになった始皇帝は、常に死を身近に感じていたといいます。

周の時代まで、殉葬といって王が逝去した際に、侍従の者たちも命を絶って共に埋葬されたとのこと、時代の変遷とともに殉葬を廃止した代わりに、8000体にも及ぶ兵士や馬をかたどった陶製の像が始皇帝の陵墓の傍らに埋められたとのことでした。

東京国立博物館には、中国政府によって持ち出すことが許された貴重な10体が、始皇帝ゆかりの品々と共に展示されています。
権力の権とは、単位を決める基準となる重りのことで、重さや長さなどの基準を決めるということは、世の中の全てを司るということから、権力という言葉に繋がるのだと初めて知りました。半両銭という江戸時代の寛永通宝にも通ずる円形の貨幣が初めて作られたのもこの頃だそうです。

また、水道管などの展示もあり、日本ではまだ弥生時代に当たる当時、氾濫した川による水害を避けるための治水工事がすでに行われていたことに驚かされました。

大都会の中心にて、世界各国のお宝を拝見し、つかの間のタイムスリップを味わうことができるのはなんと幸せなことでしょう。

写真掲載の作品名は「騎馬俑」です。
所蔵先は咸陽市文物考古研究所。 展覧会の開催は2016/2/21まで。

 

色のハレーション/空間のハレーション

Lee Ufan exhibition at Scai the bath house in Yanaka

Lee Ufan exhibition at SCAI THE BATH HOUSE in Yanaka

最も尊敬する現代アートの作家李禹煥さんの展覧会を鑑賞するため谷中のSCAI THE BATH HOUSEへ足を運びました。

60年代後半から始まった「もの派」の中核を担うアーティストとして、鉄板と自然の石だけで表現される彫刻や、点や線だけの版画やペインティングで、芸術の在り方を世に問うていらした李禹煥さんの作品は、「その辺に転がっている石と鉄板を置いただけなんてアートではない」とか、「点や線だけなら誰にでも描ける」などという心のない批判を度々受けたであろうことは想像に難くありません。

しかし、ご自身の肉体と運命を共にして来た筆の運びにより、李禹煥さんにしかなし得ない確固たる意志を持った作品を描いていらしたのです。

あまりにも情報の溢れかえった現代において、何者にも邪魔されない静寂を確保することは困難に等しく、時おり息苦しくもなるのですが、李禹煥さんの作品に向き合う瞬間は、心に静けさと安堵が訪れます。

かつて公衆浴場として、市民の憩いの場であった建物を改装したギャラリーには、李禹煥さんの半世紀以上にわたるキャリアの中でも、萌芽とも言える初期の作品、取り分け1968年に描かれて以来紛失してしまったシリーズに再び挑戦したという、鮮やかなピンク やオレンジの作品が光彩を放っていました。とは言え、芸術家たるもの過去の焼き回しでは満足なさらないようで、ご自分なりに新たな試みをなさったとのことでした。

実は、李禹煥さんはワインの愛好家でもいらっしゃるようですが、なんとあの五大シャトーのひとつに数えられる、ムートンロットシルトの2013年のラベルに、李禹煥さんの作品が用いられることが先日発表になりました。2014年のヴェルサイユ宮殿における個展に心動かされたバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社の方が採用を決定なさったとのこと、いつもはあまり色を用いない照応シリーズをボルドーカラーで表現したボトルが店頭に並ぶ日もそう遠くありません。

余白こそが物言わずして多くを語る李禹煥さんの作品は、他にも直島の李禹煥美術館、ロンドンのテートモダンなどにて常設中です。

80代にして、さらなる高みを目指してご自身を奮い立たせていらっしゃる李禹煥さんの作品に、ぜひ触れてみてください。

琳派展

Rinpa school exhibition at Kyoto national museum

Rinpa School Exhibition at Kyoto National Museum

東京国際映画祭へお出かけくださった皆様、映画「FOUJITA」を公開に先駆けてご覧いただき、ありがとうございました。
お陰様でスクリーニングも無事に終わり、11月14日の公開を待つのみとなりました。

実は先日、寸暇を惜しんで京都へ行って参りました。
桃山時代後期に本阿弥光悦と俵屋宗達の交流から始まり、尾形光琳と尾形乾山の兄弟、そして酒井抱一、鈴木其一などと江戸時代まで続いた「琳派」を代表する作品が一堂に会する琳派展を鑑賞するためでした。

盛夏の最中に、謎に包まれた俵屋宗達の人生を追う番組の撮影にて京都を訪れて以来、再び13.56mにもおよぶ、彼の光悦と宗達による競作「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」が惜しげもなく全巻展示してあるのを眺めてはため息を漏らし、宗達と光琳の「風神雷神図」を見比べたり、個人的に大変好みである「槇檜図屏風」の静けさに心癒やされたりしました。

これまで人様にお手紙を差し上げる際、書き損じてしまうことが多々あり、漢字の間違いに発送後に気付いて大恥をかいたことも、一度や二度ではありません。
しかし、本阿弥光悦ですら、写真のように柿本人麻呂の人を書き忘れて、あとから書き加えているのだと知り、微笑ましく思えました。

NHKBSプレミアム ザ・プレミアム「風神雷神図を描いた男 天才絵師・俵屋宗達の正体」は、明日21:00より放送です。

半磁器

Tsunehisa Gunji Exhibision at QUICO in Omotesando

Tsunehisa Gunji Exhibition at QUICO in Omotesando

栃木県の益子にて作陶をなさっている郡司庸久さんの展覧会が、表参道のQUICOにて開催中です。
西麻布にある桃居という器のお店を訪れる度、常設の作品の中からつい手にとってしまう作品が、郡司庸久さん、慶子さんご夫妻の作品だったことから、交流がはじまりました。

半磁器といって、石から作られる粘土と、土から作られる粘土、ふたつの素材を混ぜて練った硬いような、軟らかいような粘土から形作られた白い器たちが、我が家にはいくつもあります。写真のような一輪挿しに、マグカップ、陶盤などが、何でもない日々の暮らしをより豊かにしてくれるのです。

虎ノ門のANDAZのAOスパには、郡司さんの白い壷が数々飾られているそうです。実は、ドラマ「ゴーストライター」にて私が演じた遠野リサの部屋で用いた壷も、郡司さんがAOスパのために作られた作品の中からお借りしたものでした。

今回の展覧会では、新たに白いランプシェードやどんぶり鉢などがお目見えしました。
忙しない日常にこそ、美しい器と過ごす時間を大切にしたいと思い、来客用のコーヒーカップとソーサーを求めました。

展覧会は11月3日まで。

Sans Sucres

Chocoletes of Pierre Marcolini meet white porcelain made byTaizo Kuroda

The chocolates of Pierre Marcolini meet a white porcelain dish made by Taizo Kuroda

ベルギーのショコラティエ、ピエール・マルコリーニさんと、黒田泰蔵さんの白磁の器が都内某所にて、奇跡の出逢いを果たしました。

小さなお茶室にて迎えてくれたのは、ハナミズキの赤い実と、ホトトギス、そして、あの宮本武蔵が描いた画に大徳寺190世の天室宗竺和尚という高僧が賛を添えた掛け軸。

黒田泰蔵さんの器を用いた菓子盆には、ピエール・マルコリーニさんがこの日のために誂えてくださったノンシュガーのチョコレートが三種。オレンジピールが香るゴマを配したチョコレートに、ほんのり含んだゆずが芳しきガナッシュ、そしてくるみを包んだサクサクのミルクチョコレートと、トウモロコシ由来のGI値の低い甘味料マルチトールを用いたお品は、いずれも至福の味わいでした。

お砂糖をいただけない私にとって、お茶会への参加は少々心苦しかったのですが、こうしたノンシュガーのお茶会ならば、ためらうことなく楽しむことができます。

お抹茶はありがたいことに伊藤園のお〜い抹茶ならぬ、群鶴の白。

「このような日本の伝統的な道具を用いて、現代のモダンな作品と混在させ、ひとつの物語が生まれるのは、想像を絶する夢のような世界だ」と、ピエール・マルコリーニさんも感嘆のため息をもらしていらっしゃいました。

了入の黒楽茶椀も、黒田泰蔵さんの筒茶碗も、もちろん素敵でしたが、驚くべきは、ご亭主がお手ずからピエール・マルコリーニさんのために削られたという、カカオの枝のお茶杓で、人の手によるぬくもりを感じる素朴さに、わずかに緊張ぎみだった列席者全てが、和やかな笑いに包まれました。

Murmures des murs

Traveling amusumentpark at Jardin des Tuileries in Paris

Traveling amusementpark at le Jardin des Tuileries in Paris

数年前、ニューヨークを訪れた折に、どうしても観たかったにもかかわらず、残念ながらチケットが完売で、泣く泣く諦めた作品をようやく楽しむことができました。

世田谷パブリックシアターにて上演された「ミュルミュルミュール」では、段ボール箱、プチプチの気泡緩衝材、ビニールトタンなど、日常にありふれた何でもないものたちが様々に形を変え、非日常への鍵となって、アリスインワンダーランドのような迷宮へと私たち観客を誘います。

演出は夫と共に旅のサーカス団を率いてきたチャーリー・チャップリンの娘、ヴィクトリア・ティエレ=チャップリン、そして、迷宮に迷い込んだ主人公を演じるのは幼い頃より両親とともに旅芸人として舞台に立っていたヴィクトリアの娘のオーレリア・ティエレ。

どのような訳か退去を命じられて、部屋の荷物を梱包している主人公は、いつしかあのプチプチの緩衝材が巨大化し、モンスターになるのを目撃します。しかし、そのモンスターはどこか愛らしく、主人公をそっと抱きよせ包み込んでしまうのです。そこから始まる不思議な旅は、表情のない奇妙な男達から逃げ惑い、魅力的な男性と出逢ってつかの間の恋に落ち、また何とも言えぬ奇怪な生き物に出逢ったり、その奇怪な生き物に変身してみたり………。

ピアノにストリングスにノイズ、モダンでイノセントな音楽を背景に、オーレリアの強靱かつしなやかな身体による一人で同時に二役を演じるマイムに、情熱的なタンゴ、そしてマグカップをつま先に履いてのタップダンス、消えたはずのものが再び表れるようなマジック、さらには、ジャンプスーツを用いた宙づりでのロープアクトで、次から次へと不思議な世界へと連れて行ってくれました。

チャップリンファミリーの中で、徹底的に芸を追求し、身体を鍛錬してきたであろう片鱗が、場面の至る所に観られ、柔軟性も筋力もリズム感も到底及ばない私には、オーレリアという女性が女神に見えました。

美術も照明も音楽も衣装も、全てにおいてセンスがよく、芸術的でありながら、客席のそこかしこから子供達の笑い声も聞こえてきたことが、この度の最も嬉しい発見でした。

針とアヘン

Old port of Montreal in Quebec

Old port of Montreal in Quebec

世田谷パブリックシアターにて、ケベック州を代表する演出家ロベール・ルパージュの『針とアヘン』を観劇して参りました。

ジャズの名匠マイルス・デイヴィスと、画家に詩人に映画監督と、その表現の形態は多岐にわたったジャン・コクトー、いずれも芸術に生き、またドラッグに溺れたふたりをモチーフに、全編モノローグで繰り広げられる物語に、人目もはばからず爆笑し、そして深く考えさせられました。

上映中、絶えず回転する立方体の三面を切り取ったセットには、パリやニューヨークの映像が投影され、場面転換の度にベッドが表れては消え、また窓が開いたり、ドアが閉じられたり、限られた空間を最大限に活かす工夫が凝らされています。

北米カナダにおいて、フランス語と英語が共に公用語として話されるケベック州にて創作が行われているからでしょうか、物語の中では、同じフランス語を話しているにもかかわらず、フランス人とカナダ人の間では理解できなかったり、今度は英語で話すと、フランス人には専門用語が理解できなかったりと、相互不理解が醸し出す滑稽さは、旅をしたことのある方ならどなたでも経験のあることでしょう。

劇中、忘れ難き台詞がありました。
「芸術家は実験することを許されず、自己模倣を求められる。そして飽きられたら他の人間に代えられるだけ」

明日は我が身です。
心して生きなければ。

白漆

Akito Akagi Exhibision at Kagure

Akito Akagi Exhibision at Kagure

能登在住の赤木明登さんの漆芸作品の展覧会が、表参道のかぐれにて開催中です。

朱色や黒、拭き漆の赤茶などの作品を長年作っていらした赤木さんが、白漆に初めて挑んだとのこと、嬉々として馳せ参じました。

世界一のレストランとの呼び名も高きコペンハーゲンのNOMAが約一ヶ月限定で、マンダリンオリエンタル東京にて出店した際に、日本の器を用いたいとの趣旨に賛同して、安藤雅信さんや内田鋼一さんとともに、器を納品なさったそうです。

その折に、シェフ直々のご所望により、白漆にも初挑戦したとのこと、限られた人々しか触れることのなかった新たなシリーズにお目にかかることが叶いました。

北欧ではレモンなどの柑橘類が育たないため、酸味は蟻で摂取するとのこと、赤木さんの漆のお皿に盛られたクラッシュアイスのベッドに、蟻をまぶしたボタン海老が横たわる姿に、衝撃を受けました。

実は、仕事場で温かいお味噌汁をいただくためのお椀を見繕うべく訪れたのですが、赤木さんが職人生活25年目にしてこれもまた初めて試みたという、手描きの繊細な絵を配した大きめの黒いそば猪口を柄違いで5つ求めました。

冬休みに暇を持て余し、工房の窓から見える葉の落ちた樹木を眺めるうちに、心がうずいて蒔絵筆を買いに出かけ、朱色の漆でドローイングのようにして描いたのだそうで、作為のないそれは、私がずっと目指していながらまだたどり着けない演技の境地のようで、少し羨ましかったです。

5つ重ねて仕服に包み、仕事場へ持参します。

赤木さんの器で温かい汁物をいただきながら、能登の長い冬を思えば、来たる冬の撮影もなんとか乗り切ることができそうです。

美しきもの

Taizo Kuroda Exhibition at Yu-an

Taizo Kuroda Exhibition at Yu-an

本日、南麻布の游庵にて開催されている黒田泰蔵さんの展覧会を拝見して参りました。

花人の川瀬敏郎さんのご著書に度々登場する緊張感のある白い器に憧れて、渋谷の黒田陶苑さんにて瓶子の形をした花入れを求めたことがありました。

残念ながら和室を持たない我が家では、玄関の靴箱の上を床の間に見立てて掛け軸を飾り、
黒田泰蔵さんの花入れに季節の花を生けています。

マットな質感の濁りのない白い器たちが、どのような工程を経て生まれるのか、お訊ねしたかったのですが、黒田泰蔵さんご本人がご不在だったことが悔やまれます。

オープニングレセプションにて游庵を設計なさった安藤忠雄さんがおっしゃった言葉が印象的でした。

「美しいものを作るには、ギリギリの緊張感と命がけの仕事が必要なのです」

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MIKIMOTO 「My Pearls, My Style」 Photographer:HIRO KIMURA

LEE 2021年11月号(集英社) Photographer:伊藤彰紀

美ST 2021年11月号(光文社) Photographer:伊藤彰紀

大人のおしゃれ手帖 2021年10月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

HERS 2021年春号(光文社) Photographer:伊藤彰紀

Photographer:伊藤彰紀

GLOW 2020年1月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

GLOW 2020年1月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

GLOW 2020年1月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

Photographer:浅井佳代子

Photographer:浅井佳代子

ミセス 2021年4月号(文化出版局) Photographer:浅井佳代子

Precious 2021年9月号(小学館) Photographer:伊藤彰紀

ESSE 2021年10月号(扶桑社) Photographer:浅井佳代子

ESSE 2021年10月号(扶桑社) Photographer:浅井佳代子