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DIARY

摩天楼

Overwhelmed by skyscraper in Shanghai

しばし中国へ出かけておりました。
かつてアジアにて覇権を誇った彼の国が、文化大革命によって失った勢いをすっかり取り戻し、発展し続ける姿に圧倒されました。
日本でもここ数年で中国からの観光客をずいぶん見かけるようになり、彼らによる爆買いの有無が私たちの暮らしに影響するほどにまでなりましたが、中国本土に渡ってみると、諸外国の支社や支店が日本から撤退して、あちらでのビジネスに活路を見出そうとする意味を痛感させられました。
マカオに至っては、カジノが隆盛を極め、眠らない街と化した中心部では、新たなホテルが次々に建設されています。人生そのものがギャンブルのようなものだと思っているため、賭け事には全く興味のない私でも、人々が真剣勝負をする巨大なカジノに思わず見入ってしまいました。道を誤って訪れたあるホテルでは、浮き世の雑事を全て忘れさせ、夢心地にさせて浪費させるための竜宮城のごとき装飾に目がくらみそうになり、恐ろしささえ覚えました。

経済の発展と共に、かつて失われてしまった文化を取り戻し、市民の日常に潤いを与えようとする姿勢も各地に新設された美術館や劇場、コンサートホールなどから伺い知ることができます。
音楽に親しむ人口も増え続けているようで、アンドリス・ネルソンス氏がタクトを振ったコンサートを鑑賞する方々の示す音楽への理解の深さに、クラシック音楽の未来は決して暗いものではないと、希望を抱くことができました。

ご存じの通りGoogleやSNSのいくつかに国の規制がかかり、日本とのやり取りに少々困難を覚えましたが、その一方で、中国の都市部ではITの普及率が凄まじく、アリババの系列のアリペイや、中国独自のSNSであるWeChatによるWeChat Payなどでの決済が当たり前に行われていました。

上海、南京、マカオと訪れる中で、とりわけ南京では日本人であるがゆえに忌み嫌われることを恐れていました。
しかし、訳あって深夜に友人と訪れた南京の火鍋屋さんにて、思いがけずおいしい和牛の薄切り肉にあずかり、繊細に切り分けられた野菜や薬味を滋味深いスープと共に味わう傍らで、iPhoneの翻訳アプリにて、必死に私たちと会話をしようと試みる若いスタッフに癒やされました。
お店の方のご厚意によってマンゴーまでいただいてしまったのですが、会計時にクレジットカードが使用出来ず、現金が不足していたため、近くのキャッシュディスペンサーにて現金の引き出しを試みるもうまくいかず、お店のかわいらしいお嬢さんたちと渡り歩いた3件全てにて手持ちのカードが使用できず、あわや無銭飲食の罪に問われるのかと思いきや、かわいらしいお嬢さんと、店長らしき青年がホテルまで集金に来てくださることになったのでした。
同乗したタクシーにて、「恥をかかせてごめんなさい」と、件の翻訳アプリを私たちに見せるお嬢さんの健気さに、心を鷲づかみにされました。

エンジン音の聞こえない電動バイクが横断歩道を行く歩行者のことなどお構いなしに走ったり、歩道ですら我が物顔で走行することには辟易しましたし、高層ビルが林立する摩天楼の傍らで、わずかな商いをするあばら屋のご主人を見かけると、格差の拡大は日本の比ではないことを突きつけられましたが、10年ほど以前に訪れた時よりずいぶんと過ごしやすく感じられました。

めざましい発展を遂げる近隣諸国から日本だけが取り残されてしまったような寂しさも否めませんが、私たちには、私たちの良さがあると信じています。

さて、連続ドラマW東野圭吾『片想い』が毎週土曜日22:00よりWOWOWにて放送中です。性同一性障害に苦しむ主人公の美月を演じておりますので、ぜひご加入の上、ご覧いただけましたら嬉しいです。

素晴らしい人生

Looking up at the ceiling

来年の1月9日より日生劇場にて上演予定の舞台『黒蜥蜴』に出演させていただくことになりました。
江戸川乱歩原作の名探偵・明智小五郎シリーズより、三島由紀夫が戯曲化した極上のエンターテインメントを、デヴィッド・ルヴォーさんの演出にてご覧に入れます。
明智小五郎は井上芳雄さん、黒蜥蜴に狙われる宝石商の娘早苗を相楽樹さん、黒蜥蜴に仕えるひな夫人は朝海ひかるさん、さなえの父親である宝石商をたかお鷹さん、そして、黒蜥蜴の手下である雨宮潤一を成河さんが演じてくださいます。

お稽古に先駆けて、都内某所にて3日間のワークショップが開催されまして、お〜いお茶プレミアムティーバッグをポンッと入れたタンブラーを携えて、稽古場に向かいました。
日生劇場のような大きな劇場の舞台に立つのは初めてのことで、さらには20名を越える出演者の皆様と演劇に携わることにも慣れておらず、恐る恐る扉を開いてみると、名演出家のルヴォーさんによって、緊張している出演者ひとりひとりの心をほぐし、チームワークを形成するためのエクササイズが様々与えられ、稽古場は真剣に遊ぶ大人達の笑いに充たされました。

水を得た魚のように生き生きと、即興で表現をなさる出演者の皆さんを目の当たりにして、あまりにも豊かで、愉快で、観客になったような気分で抱腹絶倒しておりました。
達者な役者さんたちの輪の中に演劇経験の浅い私が入っては、足手まといになることは明白ですが、それでもルヴォーさんが手を差し伸べてくださり、三島由紀夫の美しくも残酷な言葉に絡め取られ、身動きができなくなりそうな心境を救っていただけました。

始まりはゆるやかに、あたたかく、間口は広く、懐深く、とはいえ、これから本番までは怒濤の台詞にさいなまれ、それを血の通ったものとするために、身もだえることになるのでしょう。
しかし、ルヴォーさんが三島由紀夫の近代能楽集の台詞から引用し、皮肉交じりにつぶやく『素晴らしい人生』という言葉を拠り所に、準備に励みたいと思います。

黒蜥蜴と明智小五郎、共に犯罪に取り憑かれ、磁石のように惹かれ合う二人のロマンチックな愛の物語をぜひ劇場にてご覧いただけましたら嬉しいです。

Bertitude

The headquarters of DERVAUX in Brussels

The headquarters of DERVAUX in Brussels

現在発売中の婦人画報10月号、そして同じく婦人画報の12月号、さらにはBS朝日の紀行番組撮影にて、ベルギーのブリュッセルを訪れました。

世界最古の皮革製品ブランドとしてベルギー王国が誇るデルヴォーの本社兼工房では、妻であり、母でありながらも、伝統的なデルヴォーのバッグに新たな息吹をもたらすデザイナーとして、自立した女性像を確立なさっているデザイナーのクリスティーナ・ゼラーさんのエスプリに圧倒されました。
ユーモア、気遣い、装い、すべてが魅力的で、「こんな懐の大きな女性に果たしてなれるものだろうか?」と、憧れの眼差しを隠せませんでした。
デザイナーであり、誰もが追随したくなるようなカリスマでありながら、決してご自身が前に出ることなく、常にデルヴォーがあるべき姿を優先し、会話の主語がいつもデルヴォーだったことが印象的でした。

また、50年以上前に販売されたバッグを丁寧に修理してお客様にお戻ししたり、新たな試みにも果敢に取り組む職人さんたちの、バッグ作りにかける熱き想いに触れることができました。
中には親子代々デルヴォーの職人さんを務めていらっしゃる方もいらして、まるで自分の子供のようにバッグを大切に扱う姿に胸を打たれました。

ブランドの名前がバッグの表面に一切書かれていない、控えめでエレガントなデルヴォーのバッグは、持つ人の個性に寄り添ってくれます。ドレスアップをした際にはもちろん相応しく、さらにはカジュアルな装いでもキリッと引き締まるので、崩しすぎにならないところが心強いです。

BS朝日の紀行番組「中谷美紀 ベルギーらしさと出会う」は、9月23日14:00より放送です。ぜひご覧下さいませ。

忙中有閑

Iris shot in the garden of Nezu museum

Photo of Irises Growing in the Nezu Museum Garden

このところ新たな作品の撮影中ですが、昨日は幸運にも撮影が早く終わったので、根津美術館にて毎年恒例の「燕子花図屏風」を鑑賞し、尾形光琳が描いたその美しき画の余韻を味わいつつ、都会のオアシスとも言える丹精されたお庭にて、青々としたかきつばたを眺めて参りました。

トレーニングに撮影、そのほかにもさまざま詰め込み過ぎまして、少々疲労が蓄積しておりましたが、大好きな作品に触れ、木漏れ日の中を歩くと、再び力がみなぎるのを覚えました。

更には、国立近代美術館にてイヤホンガイドも担当させていただいている「茶碗の中の宇宙-樂家一子相伝の芸術−」を鑑賞して参りました。

初代の長次郎からはじまり、三代道入、尾形光琳や乾山の従兄弟でもあった五代宗入などを経て、当代の吉左衛門さん、そして十六代篤人(あつんど)さんにいたるまで、樂家の系譜を辿ることのできるこの展示では、各人が伝統と革新の狭間でもがき、苦しみ、自らの道を見出そうとして来たであろうことが見受けられます。

とりわけ当代の樂吉左衛門さんのアバンギャルドな作品からは、450年以上もの歴史を背負って生まれてしまったことに対する苦悩や、反骨精神があふれており、西洋美術への深い理解とともに、日本の伝統に新たな道を示すべく、闘っていらしたように感じられました。。
初期の作品では、色やテクスチャーで果敢に挑戦しておいでで、ジャズのような即興性や、ロックのような猛々しさを感じる作品も多々ありました。
フランス滞在中の作品群は、土や釉薬などが著しく異なり、樂家の伝統に縛られない自由でのびのびとした作陶であったことが色や形状に現れていました。
そして、最も心動かされたお茶碗が、荒波のなかで、もがいてもがいてようやく辿り着いたような、静かな世界が現れた最後のふたつのお茶碗でした。
全ての抵抗をやめ、ただあるがままに無心で作られたようなお茶碗を拝見した際に、450年分の壮大なスケールの映画やオペラのエピローグのような、感慨がありました。

魂をこめて物作りをなさっている方の作品は、もの言わずして饒舌に語るのですね。
展覧会は5月21にまで開催中です。
お時間が許す折に、ぜひおでかけくださいませ。

吸血鬼

Mount fuji from the window of the airplane

Mount fuji from the window of the airplane

新たな作品の撮影のため、東京へ戻って参りましたが、肉食が止まりません。

筋トレをすればするほど、身体は筋肉の素となるたんぱく質を欲するので、我が家の冷蔵庫には、赤身のお肉としゃぶしゃぶ用の豚ロース、ラムチョップ、そして牛、豚、鳥、それぞれの挽肉を常備しています。
今宵も常温に戻した牛ヒレ肉を表面だけさっと炙り、これもまた表面だけ火の通った目玉焼きを乗せて、フライパンの余熱で温めたにんにくしょうゆと石垣島ラー油をかけていただきましたが、とろっとした卵の黄身と柔らかなお肉の相性のなんと良いことでしょう。
ヒレ肉1枚ではとても足りず、さらに追加でもう1枚、そして目玉焼きも同様にもうひとつ、ペロリと平らげてしまいました。
もちろんそれだけではありません。ゆでた空豆にサラダ、やわらかな刺身こんにゃく、そしてお取り寄せした手打ち蕎麦も加わって、まるでプロレスラーか相撲取りにでもになったような気分です。

お肉は、血の滴るような極レアが好みです。
生に近ければ近いほど、肉質がやわらかいままで、臭みも少なく感じるのです。

年齢と共にお肉を消化できなくなってきたとの声を度々耳にしますが、私の場合、年を重ねるごとに、お肉の量が増えつつあります。
数年前まで、魚介や卵は口にするにわかベジタリアンだったことが嘘のようですが、肉食を解禁して以来、お陰様でずいぶんと体力がつきました。

明日も筋トレの予定です。
良き週末をお過ごしくださいませ。

Wild Garlic

Wild garlic picking in Lobau

Wild garlic picking in Lobau

間もなく始まる撮影のために、苦手な筋力トレーニングをしております。

ピラティスやジャイロトニックのような低負荷でゆっくりと回数を重ねるタイプのトレーニングは心地よく、大好きなのですが、重いウエイトを用いた筋肉を大きくするためのトレーニングは本当に苦手です。

ジムで顔を真っ赤にしながら私の体重よりはるかに重いウエイトをつけてトレーニングをする男性たちを見る度に、自分とは無縁の世界だと思っておりましたが、まさか歯を食いしばって筋肉がチリチリと焼けるような痛みを味わう日が来ようとは…….。

もちろん、男性のような大きな身体になりたいわけではなく、なろうとしたところで簡単になれるものではありませんが、これまで摂取していたプロテインの量を2倍に増やし、集中力とモチベーションを高めるために抹茶とミックスして飲んでいます。

個人的なウイークポイントである内転筋と殿筋群を鍛え、持久力を高めるために、SPECIALIZEDの電動アシスト付きマウンテンバイクも購入しました。
生まれて初めてのマウンテンバイク購入に際しては、時代の移り変わりの早さに驚かされました。
オプションで付けたiphoneより小さな手のひらサイズのコンピューターに、地図や走行距離のみならず、自らの心拍数や消費カロリー、バッテリーの残量などが表示され、iphoneやPCとの連動で、毎日のトレーニングを記録することができるのですね。

とは言え、そもそもが怠惰な性格ゆえ休日は何もせずにゴロゴロしていたいタイプでして、マウンテンバイクでのトレーニングにも、何かしらの餌がぶら下がっていなければ、重い腰がとても上がりません。
この度は、ヨーロッパにおける春の風物詩であるワイルドガーリックを摘むことをモチベーションにして、ウィーン郊外のローバウまで足を延ばしました。
ドナウ川の支流沿いをひたすらに走り、時折坂道では電動アシストの最強モードで軽々と登り、平坦な道では自力でペダルを漕ぐうちに、ナポレオンがオーストリア制圧の際に通ったという森にたどりつきました。

ワイルドガーリックはその名のごとく、にんにくのような香りがする植物で、まだやわらかい葉をスープやジェノベーゼのようなソースにしていただきます。
森の奥で一面に繁茂するワイルドガーリックを目にした途端、疲れも一気に吹き飛び、夕食の材料を自ら収穫できることに興奮を覚えました。

日が暮れる前に持ち帰り、飴色に炒めたタマネギにカリフラワーとマッシュルーム、さらにワイルドガーリックを加えてポタージュスープにしてみました。
吸い口には、ノンフライのココナツチップスを少々とオリーブオイルを数滴。
簡単ですが、なかなかのものでした。

宇宙の創生の物語

Amazing weather in Salzburg

Amazing weather in Salzburg

『シン・レッド・ライン』やカンヌ国際映画祭でのパルム・ドール受賞作『ツリー・オブ・ライフ』などでその名を馳せるテレンス・マリック監督の最新作『ボヤージュ・オブ・タイム』にて日本語版の語りを担当させていただくことになりました。

12人もの科学者たちの監修に基づき、徹底したエビデンスを携えて撮影されたこの作品は、私たちが生きている壮大なる宇宙のはじまりの物語です。
思わずため息が漏れるほどの圧倒的な映像と、わずかな語りのみで描かれる約1時間30分の作品は、輝かしい映画スターとも、真似したくなるようなファッションとも無縁ですが、忙しい日々の中で封印してしまったであろう心の扉をそっと開いてくれます。

ケイト・ブランシェットさんの語る英語版を観た際には、時に宇宙をたゆたい、また時に懐深き大地に抱かれ、あるいは深海の静けさに身を委ねるかのようでした。
拙い言葉で表現することは大変もどかしいのですが、魂を優しくマッサージされているような感覚とでも申しましょうか。
生まれてから誰もが必ず抱く「人はなぜ生まれて来たのだろうか?なぜこの宇宙は存在しているのだろうか?」といった疑問の答えに気付かせてくれる、そんな作品です。

先日行われた録音の際には、立ち会ってくださったプロデューサーのソフォクレス・タシオリスさんが、飽きるほど観たであろう映像を前に、涙ぐんでいらっしゃいました。
実は、私も物語の佳境の場面で自ら語りながら、その映像の美しさとこの作品の慈愛に満ちたメッセージに心動かされ、はからずも声が震えてしまいました。

テロ、戦争、貧困、饑餓、災害、疾病と、様々な煩いが絶えず私たち人間を苦しめますが、この作品を観ていると、そうしたことすら、自然の営みの一部であり、すべては移ろいゆくものなのだと観念させられるのです。
世の無常を嘆いても仕方がないのだと、抗いようのないものに降伏宣言をするかのようなこの作品は、決して絶望を描いているのではなく、あたたかい希望に包まれています。

時間が許すなら、毎日でも繰り返し映画館に通いたいと思えたほどの美しい作品です。
ぜひ劇場の暗がりのなかで、何も考えず、ゆっくりご覧いただけましたら嬉しいです。

ウィーンフィルハーモニー・バル

Vienna Philharmonic Ball at Musikverein

Vienna Philharmonic Bal at Musikverein

1月のウィーンでは、400以上の舞踏会が開催されるそうで、19日に楽友協会にて行われたウィーンフィルハーモニーのバルに参加させていただきました。
人前に出る仕事をしておりながら、どちらかというと地味好みの私は、大勢が集まるパーティーは苦手なのですが、今回に限っては物見遊山を楽しみました。

開会式では白いドレスをまとったデビュタントたちが、ウィーンフィルの奏でる音楽に合わせて初々しい踊りを披露します。
老いも若きも盛装して踊りに興じる姿は、思いのほか良いものでした。

かつてドラマ『白洲次郎』にて舞踏会のシーンを演じましたが、ヴィエニーズワルツを練習するも、アメリカ大使を演じたイギリス人男性の足を度々踏みつけ、またこちらも踏みつけられ、終いには壁に激突する大惨事だったことが想い出されました。

バルに参加するにあたり、美容院で髪をセットしたり、久々に丁寧にお化粧をしてみたりと、入念に支度をする傍らにて、数日前から漬けていた鮭の味噌幽庵焼きを慣れないオーブンで焼いてみたところ、なかなか温度の上がらないオーブンにしびれを切らして高温にしたことが災いして、真っ黒焦げになってしまいました。
気付いた時にはすでに遅く、慌てて開けたオーブンからはとてつもない臭気が漂って、黒いベルベットのドレスやコートにまで焦げた魚と、味噌幽庵の甘ったるい臭いが移ってしまいました。
仕方なく、蕎麦つゆに練りごまを加えたごまだれ蕎麦を急ごしらえで用意する羽目になったのでした。
今回の失敗を教訓に、オーブンで魚を焼くことは今後一切控えたいと思います。

雪国

In the mountains of Salzburg

In the mountains of Salzburg

ただ今、ウィーンより電車で2時間半ほどにあるザルツブルグの山中に滞在しております。
1年のうち4ヶ月ほどは雪に覆われるというこの街は、ご存じの通りモーツァルトの生まれた場所として、絶えず多くの観光客が訪れています。

若かりし頃より、いつの日かザルツブルグ音楽祭を訪れてみたいと思っておりながら、生来の無精者ゆえになかなか重い腰が上がらぬまま今日に至りました。

外気がマイナス15℃になることもしばしばですが、暖炉に薪をくべ、空気を回しつつ火を起こし、その火を絶やさぬよう頃合いを見計らって新たな薪をくべることの繰り返しは、忙しい撮影の日々では考えられないほど贅沢な時間です。

近所のスーパーマーケットでは、オーストリア名産のパンプキンシードオイルなるものを発見し、ホワイトバルサミコとともにサラダのドレッシングに用いてみましたが、まるで炙ったような香ばしい風味が食欲をそそり、憎らしいことに皮下脂肪が肥大しつつあります。

皮下脂肪をそのまま放置するのも何なので、ずっと憧れだったスノーシューにも初挑戦してみました。
1メートルほど積もったふわふわの新雪に足を踏み入れ、キュッキュッと音を立てながら誰ひとりいない山中の雪原を歩くのは至福の極みです。
そして、スノーシューでカロリーを消費したことを言い訳に、再び食欲を満たす怠惰な日々を過ごしているのです。
読まなければならない本も、観なければならない映像もたくさんあるのですが……。

謹賀新年

Vienna State Opera

Vienna State Opera

あけましておめでとうございます。
よき休暇をお過ごしでいらっしゃいますか。

先週より、海外から訪れた友人に自宅を明け渡し、ウィーンに滞在中です。
毎日のように上演されるオペラやバレエを時間に追われることなく鑑賞することができることは何よりも嬉しいことです。時差ボケで時折うたた寝をしつつではありますが、少なくともよだれだけは垂らさぬよう、心がけたいと思います。

一昨日は幸運にも楽友協会にてウィーンフィルのニューイヤーコンサートのリハーサルに立ち会うことが叶い、グスターヴォ・ドゥダメルの情熱的でユーモア溢れる指揮のもと、軽やかで奥行きを感じさせる音楽の数々に耳を傾けて参りました。

客席にはドゥダメルの母国ベネズエラより、ユースオーケストラのメンバーが40名ほどキラキラと目を輝かせていました。彼らにとって、世界最高峰の一つに数えられるオーケストラの演奏を生で体験し、自国が誇る指揮者が導く姿を目の当たりにすることができることは、どれほどの喜びでしょう。

詳しくは小説幻冬の3月号にて書かせていただきますが、ニューイヤーコンサートの本番は、ヴィヴィアン・ウエストウッドによるデザインで仕立てられた新たなコスチュームに身を包んだ彼らの姿が見られるようです。
その模様は世界90カ国にて生中継されており、日本でもNHK Eテレにて19:00より放送されます。

また、今宵は街中の至る所にてジルベスターコンサートが開催されており、由緒あるウィーン・コンツェルトハウスにて、ウィーンフィルとベルリンフィルの精鋭による管弦楽アンサンブル、フィルハーモニクスのジルベスター・ガラに出かける予定です。

実は、せっかくのジルベスター・ガラですから、日本より着物を持参したのですが、愚かにも肝心な長襦袢を添えることを忘れておりました。長襦袢の清潔な半襟なしに着物をまとうことは不可能でして、超過料金を支払ってまで持ち込んだ着物が無用の長物となり果てました。
念のため東京にて私の部屋に滞在している友人に頼んで国際郵便で発送したものの、税関も郵便局もクリスマス休暇で人員不足のようで、長襦袢が届く気配は一向にありません。仕方なくリトルブラックドレスでお茶をにごすこととなり、己の不甲斐なさに呆れるばかりです。

何はともあれ、しばしの間、音楽の都を楽しみたいと思います。
皆様にとって、素晴らしき1年でありますように。

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MIKIMOTO 「My Pearls, My Style」 Photographer:HIRO KIMURA

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美ST 2021年11月号(光文社) Photographer:伊藤彰紀

大人のおしゃれ手帖 2021年10月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

HERS 2021年春号(光文社) Photographer:伊藤彰紀

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GLOW 2020年1月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

GLOW 2020年1月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

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Photographer:浅井佳代子

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ミセス 2021年4月号(文化出版局) Photographer:浅井佳代子

Precious 2021年9月号(小学館) Photographer:伊藤彰紀

ESSE 2021年10月号(扶桑社) Photographer:浅井佳代子

ESSE 2021年10月号(扶桑社) Photographer:浅井佳代子