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DIARY

私淑

The scribble of Pablo Picasso shot in Barcelona

The scribble of Pablo Picasso shot in Barcelona

心のなかで師とあおぐ方と、お食事をご一緒させていただくことが叶いました。
生きるフィールドは全く異なるものの、私にとっては歩むべき方向を見失いそうになる度に、道しるべとしている大切な存在の方で、貴重なお言葉に触れることの許された至福のひとときでした。

どのような職業においても、その仕事を全うしようとすれば葛藤が生じるように、演じることに身を捧げ、一本の筋を貫くことは決して容易ではなく、迷いと後悔の連続でもあります。

この度ご一緒させていただいた心の師は、傍目には穏やかで、思慮深く、何の迷いもなくご自身の道を突き進んでいらっしゃたように見えるのですが、それでも「自分は、何故こんなことをしているんだろう」と思うことが度々あるそうです。
目の前にあるものをすべて壊してしまいたくなる衝動に駆られることすらあるようです。
曰く、「無の境地にいたることなんて無理です。あんなものは嘘です」とのこと、「せめて表に見えるものくらいは、静かでありたいとは思いますが、心の中には常にマグマを抱えています」というのが本音だそうです。

演じるという非日常と、何でもないことの積み重ねである日常を両立させることは、大変な困難を伴うことであり、それでも日常の尊さに敵うものはないと、必死でしがみつこうとしているのです。
友人から送られてきた、裏山で採れたというタラの芽の写真を見ただけで、その何でもない日常のありがたみに涙がこぼれそうになったりします。
大切なものをどこかに忘れてきてしまったような、そんな後ろめたさは拭いきれません。
そして心の師も同様に、後悔のため息をつくのだそうで、「だったら辞めればいいじゃないかと言うのだけれど、そういうわけにはいかないんです」とおっしゃるではありませんか。

演じることを生業としようとしているお若い方に相談を持ちかけられる度に、「もっと他に幸せな道があるはず」と、別の選択肢を促してがっかりされるのですが、心の師もまた「芸術で身を立てて行こうなどとは思わない方がいい」と多くの若者たちに伝えてきたといいます。
数多の手が出尽くした現代において、芸術の新たな可能性を試みることはいばらの道を分け入るのに等しいはずです。
生半可な覚悟で生きてきた方ではないからこそ、険しき道を無防備に歩むことなど誰にも勧めないのでしょう。

しかし、品位を保ちつつ人の心に染み入る崇高なお仕事をなさっていらしたこれほどの方でも、ご自身の生きていらした道に懐疑的な眼差しを向けていらっしゃるのなら、私ごときの迷いなどむしろ当然なのだと諦めもついたのでした。

年齢も性別も国籍も職業もまったく異なるにもかかわらず、同じ苦しみを味わい、その苦しみの果てにある甘美な果実を共有できる方がこの世に存在することが、私には救いです。
わずか数時間の対話から、たくさんのヒントをいただき、生きることがますます楽しみになって来ました。

金曜ドラマ「私 結婚できないんじゃなくて、しないんです」第四話は明日夜22:00放送です。
合コンで圧勝できる秘策「おさわりを極めよ」をどうぞご堪能くださいませ。

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GLOW 2020年1月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

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Photographer:浅井佳代子

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