DIARY
白漆

Akito Akagi Exhibision at Kagure
能登在住の赤木明登さんの漆芸作品の展覧会が、表参道のかぐれにて開催中です。
朱色や黒、拭き漆の赤茶などの作品を長年作っていらした赤木さんが、白漆に初めて挑んだとのこと、嬉々として馳せ参じました。
世界一のレストランとの呼び名も高きコペンハーゲンのNOMAが約一ヶ月限定で、マンダリンオリエンタル東京にて出店した際に、日本の器を用いたいとの趣旨に賛同して、安藤雅信さんや内田鋼一さんとともに、器を納品なさったそうです。
その折に、シェフ直々のご所望により、白漆にも初挑戦したとのこと、限られた人々しか触れることのなかった新たなシリーズにお目にかかることが叶いました。
北欧ではレモンなどの柑橘類が育たないため、酸味は蟻で摂取するとのこと、赤木さんの漆のお皿に盛られたクラッシュアイスのベッドに、蟻をまぶしたボタン海老が横たわる姿に、衝撃を受けました。
実は、仕事場で温かいお味噌汁をいただくためのお椀を見繕うべく訪れたのですが、赤木さんが職人生活25年目にしてこれもまた初めて試みたという、手描きの繊細な絵を配した大きめの黒いそば猪口を柄違いで5つ求めました。
冬休みに暇を持て余し、工房の窓から見える葉の落ちた樹木を眺めるうちに、心がうずいて蒔絵筆を買いに出かけ、朱色の漆でドローイングのようにして描いたのだそうで、作為のないそれは、私がずっと目指していながらまだたどり着けない演技の境地のようで、少し羨ましかったです。
5つ重ねて仕服に包み、仕事場へ持参します。
赤木さんの器で温かい汁物をいただきながら、能登の長い冬を思えば、来たる冬の撮影もなんとか乗り切ることができそうです。