DIARY
再演
初舞台「猟銃」を再演することになりました。
井上靖さん原作のこの作品は、一人三役を演ずるモノローグで、シルク・ドゥ・ソレイユのVAREKAIに出演中のロドリーグ・プロトーさんも舞台上にはいらっしゃいますが、彼は台詞を一言も発することなくマイムに徹するため、一人芝居に等しいのです。
2011年の初演の際、「あなたが再演しないなら、ほかにいくらでも良い女優さんはいるから」と、パルコ劇場のプロデューサーの毛利美咲さんに脅されました。
「ええ、どうぞ他の方で再演なさってください」と言えなかったのは、演劇の「え」の字も知らなかった私に、モントリオールでの稽古に公演、そして、東京、兵庫、名古屋、福岡、新潟、京都と、得がたき経験をさせて下さった演劇界の母である毛利さんと、最初にご依頼をいただいてから約5年も逃げ続けたにもかかわらず、ずっと待って下さり、新たな世界の扉を開いて下さった演劇界の父である演出家のフランソワ・ジラールさんの厚い想いにお応えしたいと思ったからです。
初演の折には、稽古開始の一ヶ月前にモントリオールへ渡り、フランソワ以外の友人知人は誰ひとりとしていない彼の地で、ただひたすらに朝から晩まで台本を読むばかりで、当初は名所旧跡を訪れるゆとりなど全くありませんでした。
しかし、フランソワ曰く、「演じるとは英語でプレイ、フランス語ではジュエ、いずれも『遊ぶ』という意味を兼ねる。だから僕らは舞台の上で演じ、そして童心に返って遊ぶんだ」とのこと、稽古場で毎日お茶を淹れてくれる彼と、くだらない話しをして笑い転げていました。
再演は少しくらい楽になるだろうと久々に台本に目を通してみましたが、なかなかどうして手強いものです。
USB-Cポートを頸椎あたりに設置して、メモリーを差し込めば勝手に台詞をインストールできるように、どなたかしていただけませんか?