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DIARY

Opera

“Fat House” created by Erwin Wurm at Schloss Belvedere in Vienna

ただ今、クリスマスマーケットにて賑わうウィーンにおりますが、心はどうも落ち着かず、気が急いて仕方がありません。

舞台『黒蜥蜴』のお稽古が間もなく始まるのです。
三島由紀夫さんが美輪明宏さんに懇願してようやく上演が叶ったというこの作品を演じることは、大きな覚悟を要することです。
美しい言葉で語られる名探偵明智小五郎と女盗賊黒蜥蜴の攻防戦は、究極のエンターテインメントであり、大人のロマンチックなラブストーリーでもありますが、台詞の美しさゆえに、私の中で理性と感情が激しく闘っています。
おぼろ気な記憶のままでは、言葉を探すことに必死になって心の扉を解放することができません。また、感情ばかりが先走っても、言葉が置き去りにされてしまいます。

一日も早く、言葉の呪縛から解放されて、自由にのびのびと台詞を口にすることができるように、ただひたすらに台本を読む日々です。
記憶力を助けるために、ピンクの紙に青で印字した台本をipadに入れて、ジムのウォーキングマシンや、ステップマシーンの上で汗だくになりながらぼそぼそとつぶやいています。

夜には、身のこなしや声の響きを学ぶため、国立歌劇場にてオペラ鑑賞を。
天井桟敷なら14ユーロなどと格安でチケットを入手することが叶い、時には上演開始ギリギリで、「持って行け泥棒!」とばかりに、チケットの投げ売りを始めるディーラーがいて、挙げ句の果てに「もういいよ、君にあげるよ」と無償でチケットを譲っていただけることすらあるのです。
そうして座った席の隣には、何十年も暇つぶしにオペラ鑑賞をしていらっしゃるという高齢のご婦人がひとりで腰掛けていらして、「あのテノールのテクニックは素晴らしいわ」などと、様々教えてくださいました。

『蝶々夫人』など、女性蔑視もはなはだしい上、人種差別的で、20数年前に鑑賞して以来、ずっと苦手な演目でしたが、かつて映画にてその妻を演じさせていただいた藤田嗣治が美術を手がけていたため、あまり期待せずに聴きに行ったところ、蝶々夫人がわずか100円(現在の価値で100万円ほど)でアメリカ人に買われて嫁ぐ際に、「いずれはアメリカ人の妻をめとるつもりだけれど、とりあえずつかの間の結婚を」というくだりで、やはり憤りを覚え、日本文化を少々誤解している節が多々あり、違和感を拭いきれないものの、結末はわかっていても、夫と息子を同時に失った蝶々夫人が自ら死を選ぶ際には、悔しいかな泣かされてしまうあたり、やはり良く出来た物語なのでした。
きっと、エジプトの方々が『アイーダ』をご覧になっても、同じように違和感を抱かれるのでしょうが、私たち聴衆はそんなことも気にせずに感涙にむせぶのですから、作劇の過程において誇張表現は必要悪とも言えるのでしょう。

伝統芸能と言えるオペラも様々な試みがなされ、絢爛豪華なセットにまばゆいばかりの衣装といった作品ばかりではなく、普遍的な物語をいかに今の時代に即した表現に置き換えるかという模索がなされているようです。
成功例も失敗例も様々あるようですが、勇敢な挑戦の目撃者であり続けたいと思います。

デヴィッド・ルヴォー氏演出による『黒蜥蜴』は年明け早々の1月9日より日生劇場にて上演です。
ぜひ足をお運びくださいますよう、お願い申し上げます。

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GLOW 2020年1月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

GLOW 2020年1月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

GLOW 2020年1月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

Photographer:浅井佳代子

Photographer:浅井佳代子

ミセス 2021年4月号(文化出版局) Photographer:浅井佳代子

Precious 2021年9月号(小学館) Photographer:伊藤彰紀

ESSE 2021年10月号(扶桑社) Photographer:浅井佳代子

ESSE 2021年10月号(扶桑社) Photographer:浅井佳代子