DIARY
針とアヘン

Old port of Montreal in Quebec
世田谷パブリックシアターにて、ケベック州を代表する演出家ロベール・ルパージュの『針とアヘン』を観劇して参りました。
ジャズの名匠マイルス・デイヴィスと、画家に詩人に映画監督と、その表現の形態は多岐にわたったジャン・コクトー、いずれも芸術に生き、またドラッグに溺れたふたりをモチーフに、全編モノローグで繰り広げられる物語に、人目もはばからず爆笑し、そして深く考えさせられました。
上映中、絶えず回転する立方体の三面を切り取ったセットには、パリやニューヨークの映像が投影され、場面転換の度にベッドが表れては消え、また窓が開いたり、ドアが閉じられたり、限られた空間を最大限に活かす工夫が凝らされています。
北米カナダにおいて、フランス語と英語が共に公用語として話されるケベック州にて創作が行われているからでしょうか、物語の中では、同じフランス語を話しているにもかかわらず、フランス人とカナダ人の間では理解できなかったり、今度は英語で話すと、フランス人には専門用語が理解できなかったりと、相互不理解が醸し出す滑稽さは、旅をしたことのある方ならどなたでも経験のあることでしょう。
劇中、忘れ難き台詞がありました。
「芸術家は実験することを許されず、自己模倣を求められる。そして飽きられたら他の人間に代えられるだけ」
明日は我が身です。
心して生きなければ。