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DIARY

Merde!

Kuroyuri on the verge of blossoming

Kuroyuri on the verge of blossoming

「猟銃」の兵庫公演においでくださった皆様、誠にありがとうございました。
作品の舞台ともなった兵庫にて演じさせていただいたことは感慨もひとしおでした。

毎回、開演直前に、舞台袖の暗がりの中で共演のロドリーグ・プロトーさんと抱擁を交わし「Merde!メルド!」とお互いに声をかけあいます。
フランス語の「Merde」とは、直訳すると「糞」という意味でして、フランス語圏の方々は何か気に入らないことがあると、「Merde!」と憤慨を込めて言い放つのです。

その一方で、舞台に上がる役者に向けて幸運を祈る言葉も同様に「Merde!」だそうで、2011年の初演の折に、モントリオールの劇場の楽屋に届けられたメッセージカードには、もれなく「Merde!」の文字がありました。

何やらかつて鉄道や自動車が普及する以前、劇場へ向かう手段は馬車だったため、道に馬の糞がたくさん落ちていることが盛況の証しだったとのこと、いつしかこのお下品極まりなき言葉が、人の人生を演じて禄を食む役者たちにとってゲン担ぎの言葉となったのだそうです。

ある時「日本語で何て言うの?」とロドリーグさんに問われたので、わかりやすく「うんこ」とお伝えし、時おり日本語で、「うんこ!うんこ!うんこ!」と私たちが抱擁しながら声がけし合うものですから、小学生レベルの会話だと、スタッフに嘲笑されたりもしています。

「Merde!」で思い出しましたが、かつてパリにて多くの時間を費やしていた際に、度々犬の糞を踏みました。
「花の都パリ」などと、洒落たことを言い始めたのはどなたでしょうか?私には花の都よりも「糞の都」の印象の方が強いです。
他人のことなどお構いなしのパリジェンヌ、パリジャンたちは、自らのペットが世界中から羨望の眼差しを向けられる美しい街で排泄をしようとも、それを片付けようなどという気はさらさらなく、10歩ほど歩けば犬の糞に出くわすほど、それはいたるところに散見されます。

日本には、「転べば糞の上」ということわざがありますが、文字通り、サン=ジェルマン界隈の石畳の小路を思索に耽りながら心地よく歩いていたところ、バナナの皮を踏んだ時のあの感触、ヌルッとしたイヤな感じを革の靴底に覚えたが最後、身体は一瞬宙を舞い、冷たい石畳みの上に投げ出されただけではなく、激しい痛みを伴って着地したお尻は、まだ生あたたかいお犬様の糞の上ということが度々ありました。
そのような時、思わず口から出てしまう言葉もやはり「Merde!」なのでした。

ですから、交通事故に遭うよりも高い確率で犬の糞を踏むパリジェンヌ、パリジャンたちが土足で私の部屋に入ることはご遠慮いただきました。
あちらは寝室にまで土足で入る方々ですから、玄関で目を光らせていないと大変なことになりかねません。
不遜にも、郷に入っても郷に従わず、当時からすでに大人気だったサン=シュルピス通りのMUJIにてスリッパを購入し、履き替えていただいていたのです。

今でこそ、公共機関のスタッフが犬の糞専用のバキュームバイクで巡回し、景観を乱さぬよう注意を払ってくださいますが、本来ならばそのようなことに税金を投入するよりも、各々が自分の責任で始末するべきでしょう。しかし、そこは自己の正当化に余念がないあちらのお国柄か、「私たちが自分たちで犬の糞を掃除してしまったら、彼らの仕事がなくなって、ただでさえ高い失業率がさらに上がってしまうでしょう」とのことでございました。

金曜ドラマ「私 結婚できないんじゃなくて、しないんです」第7話は、本日22:00より放送です。
劇中では描きませんが、私の演じる橘みやびは人生の悲喜こもごもを共にしてきた愛犬ベティの糞をきちんと片付けているはずです。

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GLOW 2020年1月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

GLOW 2020年1月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

GLOW 2020年1月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

Photographer:浅井佳代子

Photographer:浅井佳代子

ミセス 2021年4月号(文化出版局) Photographer:浅井佳代子

Precious 2021年9月号(小学館) Photographer:伊藤彰紀

ESSE 2021年10月号(扶桑社) Photographer:浅井佳代子

ESSE 2021年10月号(扶桑社) Photographer:浅井佳代子