DIARY
ルーシー・リー展

Lucie Rie – A Retrospective
先日、とある撮影にて静岡県を訪れた折に、「静岡市美術館」へ足を延ばし、「没後20周年ルーシー・リー展」を鑑賞して参りました。
ルーシー・リーは、オーストリアはウイーン出身の陶芸家。
ユダヤ人であった彼女は、ナチスの迫害から逃れるため36歳でロンドンへと移り住み、93歳で亡くなるまで、シンプルでミニマルな作品を作り続けました。
白髪に白い洋服をまとうルーシー・リーの虚飾のない凜とした姿は、エレガントな女性の極みとして、没後20年を経た今もなお、私にとって憧れの存在です。
無駄な装飾を排し、薄く緊張感のあるフォルムと、釉薬の配合割合や焼成の温度などを徹底して研究したノートを用いて導き出された美しい色が、観る者の心をつかんで離しません。
また、器のみならず、第二次世界大戦中に彼女が糊口をしのぐべく手がけたカラフルでユニークな陶製のボタンの数々が並び、殺伐とした世の中に、安らぎと希望をもたらしたであろうことを想像させます。
実は、個人的にピンクや黄色といった華やかな色はあまり好みではなく、放映中のドラマ「私 結婚できないんじゃなくて、しないんです」の2話にて十倉が掲げた「3つのションを男受けに変えろ」で、「パステルカラーのワンピース」という項目がありましたが、私もみやびと同じように、あのようなかわいらしい服装はどちらかというと苦手でした。
しかし、そうしたパステルカラーも、なぜかルーシー・リーの手にかかると、美しく洗練された色に見えてくるのですから不思議です。
ルーシー・リーのピンクや黄色なら大歓迎です。
もっとも、ルーシー・リーが志した「使うための器」というコンセプトとは裏腹に、現在ではとても手が届くような代物ではなくなってしまい、ただ指をくわえて眺めていただけではありますが。
全国を巡回した展覧会も、こちらの「静岡市美術館」にて5月29日までとなっております。
最後のチャンスをどうぞお見逃しなく。