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DIARY

JOSEPH BEUYS

“Das Kapital Raum 1970-1977″permanently exhibited at Hamburger Bahnhof in Berlin

緊急事態宣言が少しずつ緩和されつつある一方で、首都圏にお住まいの皆様は依然としてままならない日々をお過ごしのことでしょう。
いつまでこのような状態が続くのでしょうか。

ただ今、ウィーンの市内におりまして、こちらでは飲食店はテイクアウトのみの営業が許され、美容室はCOVID-19の陰性証明を持参した人のみ入店可能という措置が執られています。

音楽や演劇はもっぱら無観客での開催に限られ、PCR検査をしながらの上演は多額の赤字を覚悟でなされているようです。

その一方で、いかなる状況においても心を養うために芸術は必要であるという考え方から、美術館は通常通り運営されており、ウィーン中央駅からほど近い現代美術館ベルヴェデーレ21では、20世紀を代表する現代アーティストのひとりであるヨーゼフ・ボイスの生誕100周年記念展「JOSEPH BEUYS Denken(考える).Handeln(行動する).Vermitteln(伝える)」が昨日から開催されています。

ドイツで生まれたヨーゼフ・ボイスの作品は絵画や彫刻にとどまらず、写真や映像、自分自身の出演によるパフォーマンス、スピーチなど幅広い範囲にわたります。
当時の美術界を占拠しつつあった権威主義的な考え方に反旗を翻し、アートは一部の選ばれし者だけのためにあるのではなく、誰しもが創造性を持ち合わせており、誰しもがアートに関与することができるのだと証明すべく挑発的な作品でこの世に問い続けました。

1960年代に彼も名を連ねていたフルクサス運動の担い手には、オノ・ヨーコさんや武満徹さん、彼の有名な「4分33秒」を作曲したジョン・ケージに、8ミリフィルムで知られる映像作家ジョナス・メカス、ビデオインスタレーションで名を馳せたナム・ジュン・パイクなどもおり、各々がそれぞれの方法でそれまでの常識に懐疑的な眼差しを向けていたようです。

フェルトの切れ端も、農耕機具も、ホースやバケツ、石鹸といった日用品も、土のついたガラクタや水のしたたる洗濯物も彼の手にかかると全てアート作品になってしまいます。
牛乳やチョコレート、油ですら彼の作品を組成する一部となっており、日常と芸術の間を隔てる境界線はいとも簡単に取り払われるのです。
一見したところ風変わりに思えるかもしれませんが、私たちの日常を取り巻くあらゆる物質に創造性を見出すその手法は、まるで日本人が古来より森羅万象の全てに神性を見出してきたかのように汎神論的であり、あるいは「日常使いの道具こそが美しい」という民芸運動を率いた柳宗悦さんの「用の美」という思想のようでもあり、こちらヨーロッパの人々よりも私たち日本人の方が彼の作品を理解する眼を持っているのではないかと思えた次第です。

八の字眉にたれ目がちでつぶらな瞳、そして中折れ帽にフィッシャーマンズベストがトレードマークであった彼のインタビュー映像やパフォーマンスを見る度に、なぜかフェリーニの映画「道」の横暴でわがままな大道芸人ザンパノと、彼に虐げられつつも健気に道化に徹する妻ジェルソミーナを想い出してしまいます。
ボイス自身が道化師のようでもあり、稀代の詐欺師のようであり、究極の理想主義者で、哲学者で、夢溢れる社会起業家のようでもあり、彼が言葉を発し、何かアクションを起こすと、いかがわしく面倒くさいのだけれど、ついつい気になってしまい、周囲の人々は放っておけなかったのではないでしょうか。

ヨーゼフ・ボイスは、死してなお私たちに多くを問いかけています。
アートは常に、誰も侵すことのできない聖域を心に与えてくれるものですね。

困難な状況下においても皆様のお心が、自由を見出すことができますように。

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