DIARY
猟銃

The stage set designed for “The Hunting Gun”
4月2日よりパルコ劇場にて上演される「猟銃」のお稽古が本日より始まりました。
2011年にカナダのモントリオールにて初日を迎えたこの作品を、5年の歳月を経て再びご覧に入れることとなりました。
実は、演じるという仕事に携わっていながら、この「猟銃」と出逢うまで、舞台の上で演技をした経験が一度もありませんでした。
「何度も同じことを繰り返すと飽きてしまうから」とか、「大きな声が出ないから」とか、「身体が硬いから」などと様々な理由をつけて逃げ回っていた舞台に初めて挑んだことは、女優としてというよりも、ひとりの人間として、多くのことに気付かされた貴重な体験でした。
それまでの私は、できない理由を探すことに時間を費やして、限りない可能性に自ら限界を設けていたように思います。
椅子や机もなく、小道具すらわずかしかない舞台の上で井上靖さんの書かれた言葉と、共演のロドリーグ・プロトーさんだけを拠り所にして演じてみると、そもそも何も持たずにこの世に生まれて来たのだということを改めて痛感させられました。
何も持っていなければ、失うものなどひとつもありません。
ただ心を劇場の空気にゆだねて、素直な気持ちで演じるのみです。
一人の男に届けられた三通の別れを告げる手紙。
妻、そして愛人、さらには愛人の娘と、三人の女性がそれぞれ書いた手紙を、独白のかたちで演じます。
胸をえぐるような哀しい愛の物語をぜひ劇場にてご覧いただけましたら、とても嬉しいです。