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DIARY

市井の人々

Yamaajisai arranged by Taizando exhibited at Junrian in Ginza

Yamaajisai arranged by Taizando exhibited at Junrian in Ginza

テレビ東京にて放送予定のスペシャルドラマ「模倣犯」の撮影に勤しむ日々です。

宮部みゆきさんが書かれた原作では、連続誘拐殺人の加害者とそれに巻き込まれた被害者たちの心理が容赦なく描かれ、事件解明までのスリルを味わえると同時に、人間の浅ましさ、醜さ、虚しさを痛感させられます。
目を覆いたくなるような凄惨な殺人事件が次々に繰り広げられますが、その一方で、犯罪で家族を奪われた者たちが必死で日常を紡ごうとする姿に胸を打たれるのです。

今回私が演じるのは、主人公のルポライター前畑滋子です。
婚家の町工場に暮らしつつ、決して一流とは言えないものの、なんとか細々と記事を書いてきたライターが、かつて取材した失踪女性の遺体が発見されたことをきっかけに、一念発起して事件の真相に迫るのですが、狡猾な愉快犯を追い、被害者遺族と接するうちに、「果たしてこのまま書き続けるべきなのか」、あるいは「自分にしか書けない視点があるのではないか」と心が揺れ動きます。

松田秀知監督の指揮のもと作られたセットには、ドラマでは詳述されないものの、かつて伝統工芸の職人なども取材してきたことから、ものづくりに人生を傾ける町工場の次男坊に惹かれて嫁いだという原作の人物像を反映すべく、様々な工夫がこらされています。
居間のテレビ台には古い仙台箪笥を、食卓には丸いちゃぶ台を配し、執筆部屋にも古い文机や寺子屋机、ガラスの金魚鉢などをしつらえることで、決して裕福ではないけれど、ぬくもりのある家庭が演出されています。
実は我が家でも、19歳の頃に世田谷区の「アンティーク山本商店」にて購入させていただいた文机を今でもソファーの前のローテブールとして用いており、また20歳の折に求めた車箪笥も後生大事にしております。

ドラマでは、ある俳優さんが滋子の夫を演じて下さっていますが、自らも家業に専念する傍らで、妻の仕事にも理解を示し、執筆で昼夜逆転になりつつある妻に代わって朝食を作り、事件が佳境になると洗濯物までたたんでくれる理想の夫です。
実際には、日本においてはそのようなできたご主人はまだまだ少ないことと思われますし、あるシーンで主人公が執筆をしている傍らで黙々と洗濯物をたたむ俳優さんの後ろ姿を見ていて少々切なくなったりするのは、やはり私自身の中にも「男性はかくあるべき」とか「女性はかくあるべき」などといった固定観念があるからなのでしょう。

一億総括役時代と言われましても、女性がますます苦しくなるような、そんな気がしてなりません。
家事を気軽にアウトソーシングできる制度が整い、子供や老いた親を安心して預けられる場所が潤沢にあれば多少は異なるのでしょうけれど、まだまだ追いついていないのが現状です。
10数年前にして、一部の優秀な女性ではなく、市井の女性が仕事と家庭との両立に悩み、もがく姿を描かれた宮部みゆきさんの先見性にひれ伏したくなります。

長雨の季節もあとわずかで終わりを告げ、いよいよ本格的な夏の到来です。
緻密に描かれた壮大なスケールの物語を心ある素晴らしい共演者の方々とともに作りあげて行きますので、どうぞご期待くださいませ。

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GLOW 2020年1月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

GLOW 2020年1月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

GLOW 2020年1月号(宝島社) Photographer:伊藤彰紀

Photographer:浅井佳代子

Photographer:浅井佳代子

ミセス 2021年4月号(文化出版局) Photographer:浅井佳代子

Precious 2021年9月号(小学館) Photographer:伊藤彰紀

ESSE 2021年10月号(扶桑社) Photographer:浅井佳代子

ESSE 2021年10月号(扶桑社) Photographer:浅井佳代子