DIARY
巣ごもり
金曜ドラマ「病室で念仏を唱えないでください」が終了しました。
ご視聴くださった皆様、誠にありがとうございました。
TBSのドラマ史には欠かせない磯山晶さん、かつてドラマ「JIN」にてお世話になった渡瀬暁彦さん、「逃げるは恥だが役に立つ」などをこの世に送り出していらした峠田浩さん、「IQ246」にてお世話になった高山暢比古さんからご依頼をいただき、「あなたには帰る家がある」でお世話になった平野俊一さんをはじめとする演出家の皆様に導かれながら、吉澤智子さんが書かれた脚本を咀嚼し、伊藤英明さんやムロツヨシさんなど、素晴らしい共演者の皆様と命に向き合った日々ともお別れです。
実は、クランクアップを迎えた日の夜中に慌てて飛行機に飛び乗り、ただいま国境封鎖中のオーストリアはザルツブルクの山中にて自宅軟禁中です。
日本ではお花見が盛況で、学校も順次再開とのことですが、こちらヨーロッパでは厳戒令が発せられ、食料品店、病院、薬局、ガソリンスタンド、郵便局など生活に最低限必要な業務以外すべて営業停止となっておりまして、レストランはおろか、カフェもファーストフード店も全てお休みなのです。
外出が認められるのは、食料や医薬品の買い出し、通院、わずかな散歩のみで、家族以外との交流は厳禁です。
子供たちも隔離のため公園にすら出かけられず、コロナウィルスの事情を理解できない子供たちの溢れるエネルギーを持て余した親たちが途方に暮れています。
ご存知かとは思いますが、国境を挟んですぐお隣のイタリアでは、毎日数百人の遺体が戦時中さながらに軍用トラックにて運ばれる痛ましい様がニュースで流れています。何よりも、自らの危険を顧みずに救命に携わる医療従事者たちの勇気と献身にただただ頭が下がります。フランスでも阿鼻叫喚の沙汰で、人の死には慣れているはずの医師が「これまでの人生でこんなに人が死んでいくのを見たのは初めてで、どうしていいかわからない」と、泣きながらインタビューに答えていました。
そのような時、つい数日前まで演じていた医師三宅の「助けたくて医者になったのに、いざなってみたら助けた人と同じくらい死んでいく人を見なくちゃいけなくて、助け方は教わってもおくり方までは教わらない。眠れないし、つらいし…」という台詞を思い出します。
この軟禁状態がいつまで続くのか見当も付きませんが、命あること、そして口にすることの出来る食料があることのありがたみを改めて教えられました。
因みに、日頃よりリサイクルの習慣が定着しているオーストリアでは、再生紙のトイレットペーパーもふんだんに生産されており、パニック買いが生じていないことを誇らしく思います。
きっと、このコロナ禍は世の中の価値観が大きく変わるターニングポイントになるのではないでしょうか。
皆様がどうぞご無事でありますように。