喫茶去

The great emptiness in Salzburg

ドラマ『あなたには帰る家がある』の撮影が終わり、ザルツブルクにて失われた日常を取り戻す日々でした。

2年前から密度の濃い企画書を下さっていたTBSの高橋正尚さん、長い月日を経て久々にご一緒させていただいた高成麻畝子さん、巧みな演出にて物語に緩急をつけてくださった平野俊一監督をはじめとする素晴らしきスタッフの皆様、そして、優しさと弱さをはき違えたダメ夫を、なりふり構わずコミカルに、絶妙なタイミングで演じて下さった玉木宏さん、男尊女卑をこじらせた残念で哀しい寝取られ夫を、豊かかつ鋭い感性にて演じて下さったユースケ・サンタマリアさん、さらには女性の儚さとなまめかしさ、毒々しさまでも抑制の効いたお芝居にて見事なまでに表現して下さった木村多江さんをはじめとする信頼のおけるキャストの皆様に恵まれて、働く主婦を演じさせていただいた日々では、大島里美さんが書いて下さったリアルで人間味に溢れる怒濤の台詞と闘い、真弓という人物の激しい喜怒哀楽をいかに表現するか、羞恥心や自尊心をかなぐり捨てて、心をいかに自由に解き放つかということに腐心しました。

さて、ザルツブルクでは草刈りに励み、植栽の植え替えをしたり、野菜やハーブの苗を植えたりといった何でも無いことに明け暮れていると、一日が瞬く間に過ぎてゆき、「仕事中よりも忙しいかもしれない」と思えるこの頃です。
UNIQLOのUVカットパーカーを頭から被り、更にはつば広の麦わら帽子でガードをして野良仕事に勤しんでいると、つい先日まで他人を演じていたことなど忘れて、ただひとりの人間に戻れるのです。

そんな平穏な日常に、本日は心にピリッと響く刺激が舞い込んできました。

長年にわたりお世話になっております伊藤園さんが、歌舞伎座にて公演中の七月大歌舞伎を貸し切って、日頃よりご愛飲いただいている大切なお客様や、お取引先の方々をご招待なさるというハレの場にて、お客様にお茶を差し上げるという大変なお役目を仰せつかったのです。
「私の血管には血液ではなく、お〜いお茶が流れています」と言えるほど、10代の頃より、常にお〜いお茶と共にある人生でした。
その伊藤園さんでは、「群鶴の白」と称する甘くて口当たりのよいお抹茶を作られていて、楽家の10代旦入の赤楽茶碗などを用いて、お点前をさせていただきましたが、これもひとえに伊藤園の茶道部の皆様のサポートあってのこと。訪れてはお茶を召し上がり、去って行かれた約300名のお客様とご一緒させていただいたひとときを、大切に記憶に焼き付けました。

慌ただしいようですが、これより再びザルツブルクへと旅立ちます。
雨に恵まれて、しその苗も無事であることを祈りつ………。

Back to Diary
Go To TOP